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ブオン、ブオンブオーン!
耳をつんざく爆音。族達は苛立ちからかアクセルを小刻みに吹かしている。背中越しでその表情は判らない。真っ直ぐに眼前を睨んでいる。
それらを仕切るのは中央の人物。黒髪をリーゼントに逆立てた高校生程の男だ。首を左右に回し、指先で指し示しながら、仲間達とやり取りしている。
主任の胸中、胸騒ぎにも似た感覚が広がる。あれはまだ警官なったはがりの夏の頃、その年初めての熱帯夜を記録した夜だ……
「行くぞ!」
男の号令と共に、嘶くようなタイヤの軋む音がなり始めた。アクセルは全開、フルスロットルでバイクが始動する。夜空にこだまするエキゾースト、仲間達も次々にその後を追う。主要道路への突入を開始したのだ。
それはまるで映画のワンシーンのようだった。不意に脇腹を突かれた主要道路は大混乱に陥る。響くクラクション。白煙を挙げてブレーキ音が耳をつんざく。中には制御出来ず、車同士でぶつかるものもいる。
対する族達は華麗なハンドル捌きだ。きっちりと車体を制御して、相手に擦ることもない。それにより主要道路のスピードは徐々に削がれていく。その様はまるで危険な獣を飼い慣らす調教師のようだ。遂には左右の交差点を封鎖して、道路を真っ二つに分断してしまった。
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