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「やっぱりこいつら、信号を封鎖したんだ」
主任の感じた胸騒ぎは、まさにこれだった。ほろ苦い記憶ばかりが蘇る。
「主任なにしてんすか? 信号無視、危険運転、迷惑行為、とにかく現行犯逮捕、捕まえなきゃ!」
対する新米は興奮状態だ。若さ故の正義感。違反は許さぬとばかりにパトカーに乗り込む。
「馬鹿、状況を確認しろ!」
主任も足早にパトカーに乗り込む。
「状況?」
「これは信号封鎖だ。つまりこれからが本当の脅威。焦ったら俺達の敗けなんだぞ!」
違和感は感じていた。雑踏の様子がいつもと違うのだ。鮮やかなネオン、流れるBGM、そびえるビル群。通りの真上を高架橋がぶち抜き、快速電車が通過していく。そこから吐き出された多くの人々が働きアリのように吐き出されてくる。それはいつも通りの光景。活気溢れる都会の光景。
しかし問題はその人々の様子、同じ方向を見ながら口々になにか喚いている。
「この音って?」
それで新米も違和感に気付いた。さっきから耳鳴りが酷いのだ。頭の奥底で雷のような音が響いている。最初、あの五人のせいだと思っていたが、その規模が違う。バックミラーを見てようやく気付いた。そこにいくつもの光が乱反射しているのだ。
「マジかよ?」
耳鳴りでもない、雷の音でもない。それはバイクの爆音。犇めく車両の間を縫って、バイクが邁進してくるのだ。それは一台に非ず、見える範囲で数十台。
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