第三土曜日の覇王

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「ナイトオペラね……」  漠然と言い放つ主任。  黒の集団は、既に過ぎ去っていた。後に残されたのはぐちゃぐちゃになった道路事情と喜怒哀楽様々な感情。おそらくこれから、膨大な量の事後処理が待っているだろう。  しかし今はそれを考える余裕はない。道は開かれた、追跡を開始しなければならないから。 「こちらPC25、今より追跡を開始します」  決意も新たにサイレンのスイッチに手を伸ばす。 『いや、追跡はするな』  だがその思惑に反して本部が答えた。 「何故です?」 『ガガッ、詳しくは言えないが、神奈川県警からの依頼だ』 「神奈川県警(けんけい)?」 『そういうことだ、カシャッ』  そして無線は途絶えた。 「なんすかそれ?」  怪訝そうに言い放つ新米。 「仕方なかろう。上の命令だ」  どんなに正義感に満ちようとも、彼らは公僕。命令には従う他なかった。
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