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「流石のお巡りさんも、覇王の前じゃ形無しだね」
そんな思いも知らず、若者は無邪気に笑う。
「さっきからお前、あの連中を知ってるのか?」
訊ねる新米。それで若者は慌てふためく。
「訊いた話ですよ。俺、暴走族じゃないし、ここ半年は東京にいるんで」
顔を蒼白にして、関わりを否定するように、目の前で左右の掌を振る。
「判ったから続けてくれ」
ごくりと喉を鳴らす。暫し思考に耽る。
「ここ最近なんですよ、奴らが頭角を現したのは。横浜市内を制覇し、横須賀や湘南も傘下に納めた。僅か一年の出来事らしいっす」
「俺もその噂は訊いたことある。他県のことだから、聞き流していたが」
頷く主任。
「第三土曜日の覇王って意味は?」
「奴らがチームとして走るのが第三土曜日なんだそうです。だから他のチームはビビって走らない。奴らの独壇場らしいっす。だから畏敬の念を込めて、第三土曜日の覇王」
「成る程、しっくりくるな」
悔しいがそれが正解かも知れない。
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