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「それじゃ奴らの総長ってのはどんな男なんだ?」
新米が訊いた。
「今が三代目で、英雄のように慕われてる。ってぐらい」
「三代目ね。名前は?」
「知らないっすよ。地元じゃ忌み名らしいし。その名を口にすると、厄介事に巻き込まれる、って訊くし」
おそらくそれも正解だ。有名で仲間が多い程、敵も多くなる。厄介事など、誰も巻き込まれたくない。
そして会話は途絶える。若者は噂話が好きな、単なるミーハーらしい。粗方情報は聞き出した、これ以上はムダなようだ。
「今回だけは見逃してやる」
不意に主任が免許証を差し出した。
「えっ、キップ切らないでくれるの?」
「今回だけ。今夜はそれどころじゃなくなった」
彼とすれば妙にやる気が削がれた状態だった。そしてそれは新米も同じらしい。
「気を付けて帰るんだぞ。運転には細心の注意を払って。ちゃんと修理もしとけ」
こうして若者達は夜の街に消えて行った。
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