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「渡さないよ。これはおばあさんに返すんだ」
必死に言い放つ小柄な少年。
その台詞に不良達の顔色が変わる。
「なんだと? てめぇ、持ち主に返す為に盗んだのか?」
「だったら尚更、俺らに返してもらわなきゃな。勿論ヘタなマネすればただじゃ置かない」
「サツにチクられでもしたら大変だからな」
剣呑な表情で、小柄な少年を取り囲んだ。
「えっ……あっ……」
あたふたとテンぱり、辺りを見回す小柄な少年。
「その制服、黎明のものだよな? 入学したてのお子ちゃまか?」
「笑えるよな、ガキの分際でいっぱしのヒーロー気取り。黎明学園のお坊ちゃんの分際でよ」
「エリートだからって、見下してんじゃねーぞ!」
「こうなりゃあれじゃねぇ? 入学祝に拳でお祝いとか」
「いいねぇ。俺達のルール、覚えさせっか」
恫喝し、見下すように豪語する不良達。
「なんとか言えよ、ハンチクコゾー!」
スカジャンを着込んだ男が拾った石を投げつけた。
「痛い!」
それは小柄な少年の頬を的確に殴打する。瞬く間に滲む内出血の跡。焼け付くような痛みが襲い掛かる。
それは現実。ドラマでも映画でもない直面したリアル。
「俺、俺……」
完全に取り囲まれ、逃げることも出来ない。差し迫る恐怖に涙目になった。
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