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「お前ら、なにやってんの?」
第三者の声が響いた。
「あん?」
「誰よ。これからって時に」
怪訝そうに視線を向ける不良達。
「あっ……」
同じく小柄も、その方向を見つめた。
いつの間にか公園の入り口辺りに、別の少年の姿があった。小柄な少年と同じ制服を着込む、黒髪の少年。繊細なイメージの中にも、何故か他を威圧するような覇気が感じられた。
「進藤くん……」
漠然と言い放つ小柄な少年。
「引ったくりを見られたからってイジメなんて、とんでもない悪党だな」
その彼らの先、黒髪は覚めたように言い放ち、ゆっくりと近づいてくる。
「てめーも見てたのか?」
不良のひとりが問い掛ける。リーダーと覚しきパンチパーマの男だ。
「見てたもなにも、犯行がガサツなんだよ。あれじゃ捕まえてくれって言わんばかり。そのうえ盗んだ物を落として、逆に奪われるなんて始末に追えない」
大胆にも言い放つ黒髪。
「なんだと?」
「俺ら馬鹿にしてるのか!?」
「“メサイア”なめてんのか!」
声を荒げる不良達。今にも襲い掛かりそうな様相だ。
だが黒髪は冷静だ。
「……メサイアって、最近流行りのチーマー集団だな。救世主気取ってるが、実際は疫病神。……正体は、か弱い者から搾取する奴らだったのか」
黒髪がその台詞を聞き入り耳の穴をかっぽじった。
「てめぇ……」
はっとなるスカジャン。勢いで素性を明かしたことを後悔する。
「少し黙っとけ。お前らは血気盛ん過ぎるわ。……一応相手の意見も聞いてやろうや」
だがそれをリーダーが制した。
彼らは近隣でも有名なチーム・メサイア。しかしその実態は引ったくりグループ。
だがうっかり盗んだ物を落とし、小柄な少年に逆に奪われたのだ。
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