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「進藤くん……」
絶望から、その瞼から涙が溢れ出す。
「なんだよ、コージ。エモノ使って、これでお終いか?」
「マジつまんねー。せっかくの狩りだったのにな」
「バーカ、刃物使おうが勝ちは勝ちっつったのてめーだろ? 頭いいって言ってくれや」
対する三人は勝ち誇った表情だ。笑みを見せ、冗談交じりに会話を繰り出している。
「もういいから逃げて!」
小柄の胸中、堪らない感情が溢れだす。心の底からの台詞だった。
黒髪はまだ倒れることはなかった。よろよろとふらつき、天を仰いでいる。
「……なんで逃げなきゃならない?」
真っ白い吐息が空に舞った。
「えっ?」
「確かに俺達はダチじゃない。だけどお前を置いて逃げられるかよ、同じクラスメートなんだぜ。結果として、俺とお前は出会っちまった」
空を仰いでいるため、その表情は見えない。だけど堂々たる台詞だ。
「進藤くん……」
それは小柄からすれば意外な台詞だった。仲間でもない友達でもない。ただのクラスメート、それもまだ一週間程の関係でしかなかったから。
「騒ぐなコゾー!!」
その淡白な会話がリーダーの癪に障ったようだ。ムカつき加減に腕に力を籠める。
「てめー、痛みでラリってんのか!? 他人より自分を心配しろよ!」
「マジウゼーんだよ! 友情ごっこなど、ガッコーでやれ!!」
「今度はその首、跳ね飛ばすか!!」
そしてそれは短髪達も同じこと。ムカつきを顕にして、黒髪目掛け動き出す。
「くそっ、頭がフラフラすんぞ。……せめてあいつが人質じゃなきゃ……」
黒髪はまだ先程のダメージが残った状態だ。ゆらゆらと覚束ない視線で、三人を捉えた。
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