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「よろしい。 それにしましょう」 ドクターの顔もほころんだ。 「本当にレントゲンが届いたら、信じるよ。あなたがサンタクロースだってことをね」 「まあ、見ててください」 クリスはパイプをくわえなおし、 木彫りのおもちゃを拾いあげて、 けずりはじめた。 そのようすを見ていたドクターは、 人のよさそうな顔をくもらせた。 実は、 クリスにいわなばならぬことがあり、 ずっと言葉を探していたのである。 だが、 いつでも黙っているわけにはいかない。 「実はねぇ、クリス。あなたは、 もうこのホームにいられなくなったんだよ」「へえっ? そりゃまた、なんで?」 ドクターは説明した。数年まえから評議会で問題になっており、 これまではどうやら評議員諸君の説得につとめてきたが、 今度ばかりはどうしようもなくなった、と。 そう言われても、 クリスには話がまだ見えないようだ。 ドクターは続けた。 「つまり、 こういうことなんだ。州の法律とメイプルウッド老人ホームの決まりによると、 入居者は 〈心身ともに健康な老人〉 でないといけないんだよ」 「わたしのどこが悪いんです? 先生のおおかたの患者さんより健康だって、ついこないだ太鼓判を押してくれたでしょうが? 頭のほうも、先生のテストにりっぱに合格したでしょ? あのテスト、 まだ覚えてますよ」
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