タンゴとジルバの踊り方

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ぼくが虹川さんに恋をしたわけっていうのはありがちな理由で、くりくりっとした大きな目を持つ笑顔の可愛い女の子だったからだ。 いつか告白してやろう、いつか好きって言ってやろうと日々悶々と過ごしていたぼくはたまたま立ち寄った夕方の教室に一人たそがれてた(ように見えた)虹川さんを見つけ、 「このシチュエーションで告白しなきゃ男の恥だぜ」 と思わず、突発的に、発作的に、無計画に、告白してしまったのだった。 ああ、ありがち、ああ、凡庸なぼく。 ところが極めてふつうな恋をし、多少サプライズ的な要素も含むかもしれないが普通の範疇をでてない告白をしたぼくに虹川さんはにっこり微笑んでこう言ったのだ。 「あなた、タンゴとジルバは踊れる?」 た…?タンゴ? 「男なら、タンゴとジルバくらい踊れなきゃ」
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