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それで冒頭にあるとおり、ぼくは目玉が吹っ飛ぶかと思ったのだ。
このぼくの驚き具合を実際に目玉の一つや二つ吹っ飛ばして虹川さんに伝えてあげたいね。可愛い顔して何いってんだ、この子は。
だいたいタンゴとジルバってなんだよ。
タンゴは知ってるよ。なんか、こう、激しい感じのジャンルに属するダンスだったような気がする。
ジルバは…全くしらない、今初めて聞いた単語だ。
ジルバのあとに「踊れなきゃ」と続いていたから多分タンゴと同じく踊りの名前なんだと思う。
「踊れなきゃ」という虹川さんの発言がなかったらぼくはきっとお料理につかうあの葉っぱみたいなヤツを想像しただろう。
「それはバジルよ。」
虹川さんが突っ込んできた。
考えていたことが顔にでてたらしい。
「ね。踊れるの?踊れないの?」
虹川さんは、笑顔だけど真剣な顔をしてぼくに再度問いかけた。
「い、いや、踊れない、なあ、たはははは…」
そう言うと虹川さんは大仰にため息をついてみせた。
「全く、だめねぇ」
彼女のほうが常識外れのことを言っているはずなのにここまで落胆されるわけを誰か教えてくれないだろうか。
くれないね。二人きりなんだから。
しょうがないから彼女に直接聞くしかない。
「あのう。もしよかったら教えてね?なんでタンゴとジルバを踊れないとだめ、なのかなあ」
「あら、タンゴとジルバくらい踊れなきゃ」
会話になってない会話になってない。全く質問に応えていない。
彼女は呆れ顔をしてるがその表情はぼくが浮かべるべきであって、なぜ非常識発言をした彼女がどうどうとしていて、模範的普通人間なぼくがオドオドとしているのか訳がわからない。疑問は増える一方だ。思わずなんでちゃんになってしまいそう。
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