第1章

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師走も押し迫る26日、近所での出来事。一人のおばぁちゃんがレジで困ってる。どうやらクロスワードの本を買おうと言うのだが通常は200円なのに、クリスマス特大号250円らしいおばぁちゃんの所持金200円…足りない。レジの後にはおいら。その後ろには3人位。店員が言う「クリスマス特大号なんで250円なんです」するとおばぁちゃん。「あらら、じゃぁ家に帰ってまた来ます、30分位掛かりますが…本取って置いて貰えますか?」どうやら家が遠いからか、杖をついてるので足が悪いらしい。 そこで、おいら「おばぁちゃん、50円だすよ!」と声をかけた、カウンターに乗ってる200円の横に50円を優しく置いた。 おばぁちゃんは「いいんです、取りに帰りますよ」と言うが、「まぁ年末だしね、良い事ないとね」と語りかけた。 おばぁちゃんは満面の笑みと、両手で荷物いっぱいのおいらの手をさすって「優しい方もいるもんだねぇ、ありがたい、ありがたい」としきりにお礼してた。 おばあちゃんが笑みと共によたよたと過ぎ去ると、レジはおいらの番。 会計後若い店員がそっと言う、「良い光景見せてもらいました、50円お釣に入れときます」そっとお互い顔を見合わせ、ちょっと笑うと、おいらはレジを後にした。 そこには、形の無い見えないけれど優しい空気が流れていた。
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