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魔物の脅威が少しだけ遠のき、とりあえず人類絶滅の危機が去った時代。
見渡すのも退屈に感じるほど穏やかな平原をまっすぐ通った街道を、1台の小さな幌馬車が進んでいました。
「旦那さまぁ、こんなゆっくりじゃ物盗りに狙われちまいやすぜ」
御者は馬を急かすわけでもなく、ぼんやり手綱を握ったまま、後ろに座る旦那さまに話しかけました。
「…………」
おや、旦那さまは何も答えません。
御者が様子を伺うために後ろを向くと……
「……すやすや……」
何という事でしょう。
魔物や物盗りの脅威が潜む街道で、高名なる貴族の旦那さまはすやすやと寝息を立てていました。
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