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穏やかに見える街道でも、そこは人里から遠く離れた地です。
どんな危険が潜んでいるかも分からない土地において、居眠りなど許される事ではありません。
「旦那さまぁ。こんな所で寝ていたら魔物に襲われた時に知りませんぜ」
おおよそ主人に向けて発したとは思えない口ぶりの御者でしたが、それも彼なりの忠誠心からなるものでしょう。
「んあ?私は……寝ておらんぞ……」
明らかに今起きた素振りの旦那さまは、御者の諌言にとりあえず従うべく大きな欠伸をして……突然、我に返りました。
「気をつけろ、近くに魔物の群れがいる」
貴族の旦那さまは、張り詰めた声色で御者に注意を促します。
「数と強さは?」
旦那さまの忠告を感じ取ったのか、御者の口調にも緊張感が漂います。
「数は多いが私1人で充分だ、それより馬車を頼んだぞ」
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