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貴族の旦那さまは支度を整えると、馬車から降り、街道から緑一色の平原に目をやりました。
丈夫さと災いを払うという言い伝えから、長旅をする冒険者や商人に好まれているコウゾ綿の服。
その上に、急所を守るよう機能的に金属板を打ち込んだ鎧の上下。
装飾の少ない長柄の戦斧を携えたその姿は、貴族というより、まるで歴戦の戦士のような出で立ちでした。
「お気をつけて、危なくなりましたら合図をお願いしやす」
「大丈夫、お前の手間になるようなヘマはしない」
そう言いながら旦那さまは、口元をまるごと覆わんばかりの髭面を歪ませながら、悠々と馬車を降り立って行きました。
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