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ダッ――
ナイフを握りしめ、キリエは砂クジラに向かって走りだす。
それを本当は気付かぬ砂くじらではない。キリエはけして目にも留まらぬ速さという速さではなかった…が、砂くじらはこちらを見向きもせず、ただ暴れていた。
それは攻撃を与える好機だ。
「はあぁぁ!!」
掛け声とともにジャンプして、砂クジラの背中へ乗ると、ナイフを握りしめた腕を持ち上げ、そして一撃。
グサッ
「グオオォォォォ!!!!」
耳が痛くなるほどの強烈な咆哮。キリエを落とそうと暴れ狂いだした。
すかさずキリエは、刺したナイフを掴みながら落とされないよう食いしばる。
「ォォ…」
しばらくして、先程まで暴れていたのが嘘のように砂クジラが弱々しい鳴き声をもらし。動かなくなった。
(倒し…た?)
ナイフを刺したまま、動く様子もない。
これは倒したと意味だろうか?
そう思い、気が緩んだ。しかし――
「グオオォォ!!」
「わぁ!!」
この機を待っていたかのように再び砂クジラが暴れだした。
突然の不意打ちにキリエは砂クジラの背中から振り落とされる。
「なっ!?」
振り落とされ、受け身もとれないままキリエはそのまま地面へ落下した。
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