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通常決闘とは、互いの同意のもとに一対一で闘いどちらかが降参するか、もしくは死を含む戦闘不能もって終わりとする。
そしてここに決闘を申し込んだ者と受けた者の闘いが始まった、かと思えば、そこに広がるのはまるで大人にじゃれつく赤子との遊びだった。
リズは手を使い、足を回し、木剣を振るう。数分も続いたかと思われるこの攻撃は、一方的に防がれた。時には背後からも仕掛けてみたが、背中に目でもついてるのか全て止められた。
最後の攻撃を止めた時、リズは随分と息を切らしていた。対してチトセは呼吸の乱れもなく、自分の料理をたいらげた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「ごっそさん」
一つ息をついて落ち着く使い魔と、方や息を切らして睨み付ける主。
――まともに闘わずとも、力の差は歴然だった。
「…認めない」
彼女は搾り出すように呟いた。
「あんたみたいな下民がっ、あたしよりも上なんて絶対認めない!」
叫ぶと木剣を投げ捨て、懐から杖を取り出した。瞬時に魔法が来ると悟りテーブルから離れるチトセ。目だけを動かして出口を探す。そして、リズの背後――窓が目に入った。
「認めるもんか!!」
咆哮と同時になりふり構わず突き出す。目の端に、雫を溜めて――。
召喚された時とは違う危険を感じチトセは窓から飛び出した。きちんと鍵と硝子戸を開き、しかも小脇に主を抱えた状態で。
刹那、爆発が起こた。窓が唯一の出口のように爆風と余波が背後から彼らの後を追う。チトセは軽く舌打ちしてリズを前で抱えた。直後に背中に衝撃を感じた。いくつもの破片が背中に当たり服が破ける音がする。
そして一瞬の浮遊感を感じ――落下した。
ちなみにリズの部屋は五階にある。およそ二十メートル前後を重力に従い落ちたのだ。
しかし着地の衝撃は軽く、猫が塀から飛び降りた程度の音しかなかった。
しばし霰の如くに降る破片を受けながら、胸の中にいる、気を失った主をみた。恐らく充分に休めていないのに魔法を使い、激昂したせいで制御も出来ずに無理をしたのだろう。多分その結果があの爆発だ。
「…あー、面倒くせ」
リズを抱えたまま立ち上がり、寮の玄関へ向かう。
揺れるリズの目から、一つ雫が零れた。
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