中盤ノ弐

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反動でひっくり返るセリとリオン。それ程の勢いを持つ火球は地を削りながら飛来し、着弾と同時に大気を震わす爆音を上げた。 魔力が存分に込められたこの攻撃はさすがに効いたのか、初めてベスが悲鳴のような声を上げた。燻る背中の激痛に耐え、その原因を探すべく背後に顔を向ける。 そして一人のニンゲンと一頭のケモノを捉え、次の破壊対象と定めた。 振り向き様に駆け出し、恐ろしい威圧感と共にセリとリオンに猛然と突進する。 「まずい!ガルディス!」 何とか立ち直ったキースは使い魔に飛び乗り、そのまま濃金の少女の元へ急ぎ、同時に杖を振った。 するとベスの踏み込みに合わせて、足周辺の土が沈みこむ。 突如出現した穴に足を取られ、悪魔は大きく転倒した。したたかに顔面を打ち、その痛みに再び低い声を上げる。 知り合いが同じ様にずっこけたのなら大笑いするとこだが、状況が違う。こんな事は悪魔の怒りを増幅させるだけだと知っているため、笑える訳がない。 だがその間にキースはセリの元へ辿り着く事が出来た。 「馬鹿!何でこっちに来たのよ!あんたまで来たらあいつがこっちに集中しちゃうでしょ!」 起き上がりながら喚くセリに、キースも負けじと声を張り上げた。 「助けてくれてありがとう!ところで君こそわかっているのか!君の後ろにはラリーさんがいるんだぞ!」 先輩騎士の名を出され、セリはハッとして振り返った。そこには微笑んだまま凍っているラリーが立っている。 ――しまった。 「今こっちに来られたらラリーさんが――」 「いや、もう遅い」 慌てて注意を呼びかけようとした少女を遮り、キースが重い言葉を吐く。彼らの目には、起き上がって驀進(ばくしん)してくる悪魔が映っていた。 「セリ、こうなったら我慢比べだよ」 少年は両手で杖を握ると前方に構えた。目と鼻の先で右腕を振り上げる悪魔に備え、 「障壁を張るんだ!!」 持てる魔力を全力で固め、仲間達を包むように半球型の壁を造った。 ――ゴアアァァァ!! 咆哮と同時に岩のような拳が振り下ろされ、魔力の壁と衝突して轟音を立てた。 鼻の先で打ち付けられる拳は巨大で、目に映る暴力に心が折れそうになる。 だが、ここで負ける事は全員の死を意味する。 「キース!」 それがわかるから、セリも彼の隣で障壁を張った。
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