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「この馬鹿ちん共が」
セリアーノとキースは、浴びせられた言葉にポカンとしてしまった。
あれから数日、報告書や雑務に追われていた彼らの元に本陣から伝言が来た。内容はラリーの意識が回復した事と、特別に面会を許可するとの事だった。
二人は一目散に走りだし救護陣へ向かった。そして上半身を起こした状態のラリーに駆け寄った所、先程の言葉を投げ付けられたのだった。
「お前ら、あの時何で戻って来た」
冷凍状態からの奇跡的な生還を果たしたばかりなのに、ラリーは声を尖らせた。目を三角にして、いかにも怒ってますといった風に腕を組む。
「俺は逃げろって言ったよな?何で戻って来た?自分達ならベスに勝てると思ったか?俺が信用出来なかったか?」
立て続けに問われ、少年達は言葉を失い肩を落とす。
「お前らがした命令違反は騎士が絶対しちゃいけない事の一つだ。それが解った上での行動だったのか?」
それは二人ともよく解っていた。上官の命令は絶対であり、それに背く事は国に背く事と同義になる。
――それでも、見捨てる事なんて出来なかった。
神妙に頷く後輩に溜息をつき、ラリーは続けた。
「この事で騎士になれなくなるかもしれない。それでも後悔はないか?」
これには二人共動揺を見せた。彼らの学院生活は騎士になるためのものだ。それを失うという事は、ある意味生きる指針を失うといっても過言ではない。
――けれど、ラリーを助けにいった事を後悔とはしたくない。
二人の学生は意を決して頷いた。
「ラリーさんが助かったから」
後悔はない、と。
ラリーは再度、大きな溜息をついた。
「簡単に後悔しないなんて言うな。ここで諦めたら、お前らがこれから救うはずだった人達が救われなくなる」
一時の感情に囚われずもっと先の事も考えろ、と。
言葉が胸に突き刺さり、セリとキースは俯いた。
学生達に反省の色が見えた辺りで、先輩騎士は小さく苦笑した。
「実は俺もな、昔ウルガイさんに同じ事言われたんだ。新米なのに無茶して説教された」
――そういう事は強くなってからしなさい。勇気と無謀は違いますよ。
「お前らも肝に命じとけ。あとな――」
ニカッと笑い、ラリーは二人に頭を下げた。
「助けてくれてありがとうよ。おかげで今生きてる」
その笑顔が何だか懐かしくて、二人の心に喜びと一緒に強い思いが込み上げた。
――強くなろう。
心に誓った。
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