中盤ノ弐

36/56
前へ
/642ページ
次へ
無事に宿を見つけた四人は、この日はそのまま休み翌日に城へ赴く事にした。 そして翌朝の出発時、準備をした少年達の姿を見て、深紅の青年が呆れ口調でぼやいた。 「お前ら、昨日あんだけ言っといてその格好かよ」 彼らは学生服を纏っていた。学生という立場状、これが正式な服装になるからだ。ただ仕上がりは最高で、シワ一つない。 「そういうあんたこそ、いつもと変わらないじゃない」 リズの言う通り、彼も普段と変わらぬ黒ずくめの格好だ。チトセは口にモクをくわえ、顔を歪めて言い返す。 「いいんだよ。正装何か持ってねえし、そういう事は上の奴らに任しときゃ。俺らはただの使いっぱだしな」 その言葉に苦笑する三人と共に、軽装となった青年達は城へ向かった。 城は巨大だった。城下街同様、蜂蜜色の不思議な石を使って建てられたようで、全体像は明るい印象を受ける。しかし要所には厚い防壁があり、やはり要塞然とした外観は威圧感がある。また山を利用した地形は守り易く攻め難い。尖塔はないが見張り台は多く、兵も常駐しているようだ。 四人は長い上り坂の先ある、これまた大きな城門に辿り着いた。そこの衛兵に身分と目的を伝え、女王への謁見を願い出る。 年齢不詳のいやに綺麗な顔立ちの兵達は、こんな若者達がコーセリアからの使者である事を胡散臭そう思っていたが、トマスからの書状を見せると一人が女王へ報告に行った。 「なあ、衛兵さんよ。最近ゲヘナの森で変わった事はなかったかい?」 待ってる間、チトセが兵の一人に尋ねた。 「どういう事だ?」 「いや俺ら森の街道を通って来たんだけど、何か空気がざわついてたんだよ。何か知ってるかい?」 その発言に兵は怪訝な顔をした。 「空気がざわつくだと?何を言っているか解らんが、これといった大事は起きてない」 そうか、と私案顔になる青年に、今度は兵が尋ねた。 「魔物にでも襲われたのか?」 「いんや、街道は安全だったよ。森の奥は知らんけどね」 彼は肩を竦める。彼らの会話にいまいち着いていけなかった学生達は、城門から見渡せる街の俯瞰の絶景に見入っていた。建物が段々に建ち並び、街全体が巨人の階段の様だ。 三人を放置して衛兵と話し込んでいたチトセの元へ、取り次ぎに行った兵士が慌てて戻ってきた。 「謁見の許可が降りた。すぐに会うとおっしゃっている」 それに頷き、彼らは城内に入る。 「さあ、『闇姫』との面会だ」
/642ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62007人が本棚に入れています
本棚に追加