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命を賭けて掴み取るはずだった自由は、闘志を漲らせた途端放り投げるように与えられた。
ルナティアの突然過ぎる心変わり。裏に何かがあると勘ぐってしまうのも仕方がない。
チトセは彼女の狙いを見抜こうと目を凝らすが、今の闇姫からは戦闘に対する意欲も感じられず、こちらもやる気が萎えてしまう。
彼としては一発もらい損なのだか、こうなっては仕方がない。やる気のない相手と闘う程、彼も戦闘狂ではない。
それに、闇姫の心変わりの原因は、明らかに右腕の異様な模様だ。彼女の真意をも知りたい。
――とはいえ、やっぱり借りたままはストレスが溜まる。
深紅の青年は、息を吐いて威圧を収めると、こんな事を尋ねた。
「わかった、話してくれ。でもその前に、何か壊していいもんないか?」
急に消えた圧力と彼の質問に、食い縛っていたオルドの顎がストンと落ちた。同様に、意識を保っていた者も言葉を失い、学生達に至っては呆れて二の句も告げない様子だった。
さすがにチトセの不機嫌を悟ったのか、ルナティアが苦笑しながら答えた。
「すまぬが我慢してくれ。そちに暴れられると、後片付けが大変そうじゃ」
――自分は人の事壁にめり込ませといて、よく言うぜ。
青年がそんな気持ちを目一杯込めた白い目に、闇姫は苦笑を深めるしかなかった。
「だから悪かったと言っておるじゃろうに。それよりもロカの事を知りたいんじゃろ。ついでに右腕の模様の事も気になるじゃろ?」
話をそらすにはちょっと無理矢理だが、それも正しいためチトセは頷いた。
正直この模様は気色悪い。これから夏本番だってのに、袖も捲れない。
そんな青年のズレた感性を知る由もなく、闇姫様はどう言葉にするか悩んだ挙げ句、さっぱりストレートに告げたのだった。
「その模様は、ある種呪いみたいなものじゃ」
チトセは思わず耳をほじった。
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