始まりの次

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「・・・は?」 面食らう少女。彼女は使い魔同士でしていた会話は理解出来なかった。つまり彼女にしてみれば突然知らない言葉を言われたのだから、当然の反応かもしれない。 「チトセだ。俺の名前」 リズはようやくその不思議な響きの単語が、自分の使い魔の名だと思い至った。 「・・・聞き慣れない名前ね。どういう意味なの?」 「俺がいたとこの言葉でな、千年って意味だ」 「・・・千年、ね。大層な名前だわ。あたしは・・・」 「知ってるよ、リースレット・フォン・ルーベンシュタイン。なんか有名らしいな」 思わず目を見開くリズ。自分は名乗った覚えはないのだ。 「あんたが寝てる間に他の奴らが教えてくれた。それ以外は何も知らねえよ」 しれっと答える青年チトセ。どこか軽い、飄々とした雰囲気なのに、彼の深紅の瞳はあまりにも深い。だが随分と男前なのにその雰囲気のせいでせいぜい二枚目崩れといった感じだ。 それにしても―― 「・・・あんたその物言いはやっはり下民ね?はぁ…なんでこんな奴があたしの使い魔なのよ…」 自然とため息が出た。祈ったのは無垢な魂を持った強い使い魔だ。 確かにこの黒づくめの青年は強いかも知れない。ソラとナグモの戦闘が始まる前に止めたことや、自分達――自分はともかく優秀なクラスメイトやレベッカの魔法を受けてもぴんぴんしていた事などはまだ記憶に新しい。 姿形を見れば、長身痩躯の鋼のような立派な体格に、整いつつも精悍な顔付き。深紅の髪は陽に当たれば燃えているように美しくも見える。 確かに、確かに彼は強いかもしれないが、お世辞にも無垢とは言い難い。言葉遣いからは粗野な部分、行動からは礼儀知らずなところがある。ましてや下民の使い魔など、貴族としてのプライドが許せなかった。 「下々の民てのはつまりは普通の人間だろ?何がいけないのかわからねえな。ま、俺の国にはそういうのはなかったけどよ、歩いて来たの」「お待たせいたしました」 話の途中、再びドアがノックされ先程の少女の声がした。
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