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「ふむ、どうにか全員が召喚を成功させたようじゃな。ルーベンシュタインの娘もよかったではないか」
穏やかな声が室内を満たした。声の主は長いヒゲを片手で撫でながら、立派な椅子に座り、広く重厚な造りの机にある書類に目を通している。
「はい、おじい・・・学院長」
おかげで修練場が大変なことになりましたが、と苦笑を浮かべるレベッカ。
「なんじゃ、昔のようにおじい様とは呼んでくれんのか?孫の成長はうれしい反面寂しいの~」
残念そうな顔でため息をつく老人。
少し薄暗い学院長室で、リズ達の担任のレベッカが、実の祖父と向き合っていた。
白く長い髪と髭をたくわえた、優しそうな顔立ちの老人だ。レベッカと同じ紫色の瞳を持ち、好々爺然とした空気を纏っている。肌には随分とシワが刻まれているが、その体格は恐ろしい長身に筋骨隆々として素晴らしいものがあり、着ている深緑のローブの上からでもそれが見てとれた。
「しかしこの使い魔の種類が不明とはどういうことじゃ?」
表情を疑問に切り替えて尋ねる。だが、現場にいた孫は再び苦笑を浮かべる事しかできなかった。
「それが…わからないんです。一見人間に見えるのですが、身体能力が人のそれとは掛け離れていて…。魔力も感じませんでしたし、何より彼は空から降ってきたかもしれません」
フム、と何か考え込むように両手を組み肘を机に乗せる学院長。
話を聞けば、レベッカとソラが召喚の直前に空を飛ぶ何かを見たという。それが魔方陣に落ちて来たとなれば、確かに前例がないことかも知れず少なくとも彼の記憶にはない。しかしそれ故にどう対応するかを決めるのは難しい。
――が。
「なんか起きてから考えるとするかの。それまではなりゆきに任せるとしよう」
学院で最高位の者は、だらしなく椅子の背にもたれた。
彼をよく知る孫のレベッカは、何となくこうなる気がしており、小さくため息をついた。
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