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「…やっべ~、後六本しかねぇ」
チトセはタバコの残数を確認して唸る。箱には既に半数以下しか残っていなかった。
現世からこちらの世界に来てからまだ三日。幸いにもポケットに入れてあった新品のタバコを吸っていたが、主が気を失っている時間が長かったから、つい暇つぶしに吸っていたらもう失くなりかけている。
(こっちにタバコなんかないだろうしなあ…止め時かなぁ)
少し諦め気味に残りから一本取り、口にくわえる。ため息と共に紫煙を吐き出す姿は若干哀愁が漂うが、誰も彼を見ていない。何せ今は昼の優雅なティータイムなのだ。
講義城の中庭、色とりどりの花が咲き乱れ時には花びらがそよ風に舞っている。その美しい風景の中で、貴族の坊ちゃん嬢ちゃんが可憐な微笑を振り撒きながら紅茶や茶菓子を楽しんでいる。
そんな状況に慣れないチトセは、庭の隅でやさぐれたようにタバコをふかしているのだった。しかも未だボロボロの服で。
この日も、何故か学院長の決断で召喚の儀を行った学年の生徒は休みになるが、全寮制の学院で出来ることは少なく、さらに貴族ということで弾ける人間も少なく、他生徒との交流会よろしくにこやかに微笑んでいるのだ。
そんな中、チトセの主は――
「そういえばあんた達の使い魔って何なの?」
何やら高そうな香りのする紅茶が入ったカップに口をつけながら、リズは疑問を投げ掛ける。視界の隅に自分の使い魔を入れているが、昨夜以来気恥ずかしくて目を合わせられないでいる。
「ああ、あんた気を失ってたもんね。誰が何を召喚したかとか知らないか」
納得した風に頷いている同席のセリとファラー。
周りにも自分の使い魔を膝上や傍らに置き、談笑している者は多い。
「じゃあいい機会だから教えてあげるわ。おいで、リオン」
そう言うと何か動物が彼女の膝に飛び乗り、それを抱き上げて見せた。
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