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「・・・そ、そういえばファラーの使い魔は?」
リズは動揺を悟られないように意識しながら尋ねる。今は眼前のセリを直視してはいけない。
名残惜しそうに両手を宙にさ迷わせていた無口な少女は、おもむろに指をくわえて空を見上げ、高い音を発した。指笛だ。
何事かと周りからも伺う視線が集まる。ファラーはまだ空を見ている。皆が彼女の視線の先を追うと、翼を持った何かが視界に入った。
何かと思って見ていると、小さかった体がどんどん大きくなり、その姿が鮮明になっていく。
もはや鳥ではないそれは、陽光を弾く鱗を生やし、大きな足とは反比例する小さめの手を持ち、長く太い尾をくねらせて、伸びた首の先にはトカゲを彷彿とさせる頭に角がついている。
それは着地と共に風を巻き起こし、端から端まで十メートルはありそうな翼を畳んでファラーに頭を擦り寄せた。
「いい子ね」
僅かに微笑を浮かべてそれを撫でる彼女は、どこぞの姫を思わせた。
――ドラゴンに護られる姫を。
ファラーの使い魔は、巨大な――とは言っても他種に比べると大分小さいが――銀鱗を持つ竜だった。その姿のなんと神々しいことか。鋭い爪と牙が見えるも、大理石のように輝くそれらさえ美しく思える。透き通るエメラルドグリーンの瞳が確かな知性と気高さを感じさせた。
全員が呆気に取られている間に竜の主――否、姫は抑揚に欠ける声で紹介する。
「この子がわたしの使い魔、ルヴァ」
ただ、簡潔に。
リズは顎が外れそうな程に口を開けてしまった。。周囲の他クラスの生徒達手もあんぐりと大口を開けていた。目はこれ以上ないくらいに開かれ、目玉が零れそうな程だ。
そこへ、どこか気障ったらしい声がする。
「何だい、何だい、何事だい?」
集まっていた生徒を掻き分けて近づいてくるのわ、ミスタ・気障野郎のキースだった。グレンも一緒だ。
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