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「おやおや、あれはファラーの銀竜、ルヴァじゃないか。いつ見ても跪づきたくなるほど美しいね」
踊るように前に出て、舞台の台詞のような言葉を紡ぐ。その仕草は大仰で芝居じみていたが、見目麗しいと言えるキースがやると様になっている。
彼をよく知らない女子はどこか恍惚とした表情を浮かべるが、ほとんどの男子と彼を知る女子は特に反応しない。
彼の後ろから着いて来ていたグレンも呆れ顔を見せている。
「で、何事だ?なんで中庭なんて狭い場所にルヴァを呼び出してんだ?」
ざっくばらんな口調で尋ねるグレンに、周りの何人かはひそひそと陰口を叩く。
――下民がなにをでしゃばっているんだ。
――お呼びじゃないんだよ。
――貴族に対してあんな態度をとるなんて、調子に乗ってるんじゃないか?
そんな誹謗を嘆息をしてつまらなそうに聞き流しがら、リズ達を見る。まるで気にする様子がないのは、大したものと言えよう。
「あたしが昨日気を失っちゃったから、みんながどんな使い魔を召喚したか聞いてただけよ…」
リズがふて腐れたように答える。彼女もまた、下民嫌いの一人だ。何故大貴族のセリやファラー、キースまでもが彼と仲良くしているのか解りかねていた。だが自分の友達が仲良くしているから、とりあえずリズは邪険に扱う事はしなかった。
もし状況が全く違い、彼女の友人がグレンと仲良くなかったら、きっとこの質問も無視していたことだろう。
「なるほどね」納得したように頷く黒髪三編みの少年。そして更に何か言おうとしたところで、キースが割り込む。
「つまりは使い魔の紹介だねっ。いいじゃないか、ならば僕の可愛いガルディスを紹介してあげようっ」
そう叫ぶが早く、グレンが止めようとするのも聞かずに、キースは杖を指揮棒のように振った。
途端に地面に魔法陣が浮かび上がり、水色の燐光を放っては光の粒が何かを形作る。
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