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古城の家を監視していた部下から連絡を受け、エリカは動揺を隠せなかった……。
こんなことは今まで一度もなかった……。
古城の住まい兼診察室は桐生の組織が管理している物件だった……。
何も知らない一般人にはただの一戸建てとしてしか映らないだろうし、真相を知っている裏社会の住人達は決してここを襲撃しようとは思わないだろう……。
ここを襲うことは桐生龍治の私有地に土足で足を踏み入れる行為だということを、少しでも裏社会に精通している者なら熟知しているはずだった……。
ここを襲えば間違いなく桐生からの報復を受けることは必須だった……。
現にこれまでここが賊に襲われたことなど一度もなかった……。
それが、今日突然破られた。
周囲に住む住民達に不安を与えない為に、エリカは物々しい兵隊達を警備に当たらせていなかった。
ただし、最低限の監視をする為に、素人を装った自分の部下を向かいのアパートに配置し、シフト制で24時間監視を怠らないようにしていた。
部下からの報告によれば、バンに乗ってやってきた男達は運転手を含めて5人。
そして、その数十メートル後ろに黒塗りのセダンが停まっていたという……。
このセダンからは人の出入りはなく、窓にもスモークが貼られていた為、人数を確認することはできなかったというが、多くても中に乗っていたのは4人までだろう……。
恐らくセダンの中に乗っていた連中は計画を円滑に進める為に周囲を監視していたのだろう……。
邪魔者が現れた場合にはそれなりの“暴力”を行使する用意があったと思われる……。
とにかく彼らは桐生の組織を全く恐れる気配はなく、着実に計画を実行した……。
しかし、バンに乗っていた男達は覆面で顔を隠していたとはいえ、身なりや、体型から十代後半から二重代前半の若いチンピラのような印象を受けたとエリカの部下はエリカに報告した。
若さゆえの無謀さなのか……?
それとも……?
突然訪れた不測の事態にエリカは困惑していた……。
【続く】
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