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リサと古城をさらった覆面の男達を乗せたバンは住宅街を抜け、大通りから国道246に入った。
一体どこへ向かっているんだろう……。
リサは漠然とそう思っていたが、隣に座っている古城は何となく彼らの行動を読み取っていた。
どこに行くにせよ、彼らは渋谷から離れるはずだ……。
彼らの目的が何であれ渋谷にいるのはうまくない……。
渋谷は桐生の組織のシマだ……。
エリカの庭である……。
渋谷にいればすぐに身柄を押さえられ、計画を潰されてしまう可能性がある。
少しでも頭のある者なら桐生と対峙するにあたり、渋谷から離れるはずだ……。
しかし、所詮は猿の浅知恵……。
行動を起こした時点で彼らの死は明らかだった……。
「……ちょっと、触らないでよ!」
突然、リサが大声を上げた。
リサの隣に座っていた覆面の男がリサの体を触っていたのだ……。
覆面で顔は隠していたが、男の眼を見て古城は思った。
この男の眼は明らかに“性”に溺れた者の眼だ……。
女がなくては生きていけない性犯罪者の眼……。
リサが大声をあげて嫌がっても、男はリサの体に触るのをやめようとはしなかった……。
「やめろ!女に触るんじゃない……」
口を塞がれ喋ることのできない古城に代わって、運転席に座っていた男が口を開いた。
それでもリサの隣に座っている男は触るのをやめようとしなかった……。
「おい、言うことが聞けないのか?“あれ”が貰えなくなるぞ……。お前だけじゃない。俺達全員が“あれ”を手にいられなくなるんだ……。それ以上続けるならお前を殺すぞ……」
運転手の言葉にリサの隣に座っていた男は手を止めた。
二人のやり取りを聞いていた古城は思った。
男達がこれほど欲しがる“あれ”とは何なのだろうか……?
【続く】
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