第一章 アタシは誰……?

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“センセー”こと古城俊樹は裏の世界では名の通った闇医者だった。 古城は腕は超一流だったが、金の為なら何でもやる男だった……。 しかしある時、闇ルートで取引された臓器移植に携わったことが発覚し、表の医療界から追放された。 行き場を失い途方に暮れていた古城に救いの手を差し延べたのが渋谷の街を牛耳る桐生龍治だった……。 桐生は円山町の住宅街にある一軒の民家を古城に与え、そこで開業させた。 もちろんそこには看板も何も掛かっていない、外から見ればただの一戸建ての民家だった。 しかし、そこには朝から晩まで次々と急患が運び込まれてきた。 運び込まれてくるのは主に銃で撃たれた者や、青龍刀で斬られた者、喧嘩で負傷した者など、表の病院に行けばたちまち警察に通報されてしまうような訳ありの患者達ばかりだった……。 そんな者達を古城は文句一つ言わず、誰であろうと診察し、治療を施した。 時には大掛かりな手術をすることも少なくなかった……。 表の世界から追放された古城にとって選択の余地はなかった……。 気がつけば古城は桐生お抱えの闇医者になっていた……。 リサもそんな古城のところに運び込まれた患者の一人だった……。 あの時、ビリヤード場でエリカに撃たれたリサはすぐにここに運び込まれた。 古城の見事な技術もあり、リサは一命を取り留めた。 しかし、倒れた時の打ち所が悪かったのか、撃たれたことによって一時的に記憶が混乱したのか、リサは過去の記憶を全く覚えていなかった……。 そう、最愛の弟ヤマトのことも、ヤマトの死に関係しているかもしれない“山ピーの魔法の言葉”についても全く覚えていなかった……。 古城が診察した結果、リサに過去の事実を話していけば、記憶は次第に思い出してくるはずだと診断された。 しかし、エリカは古城にストップを掛け、リサに過去の話をすることを禁じた。 桐生に飼われている古城はエリカの命令に背くわけにはいかなかった。 もちろんエリカにはある意図があり、古城に口止めさせていた。 それは……。 【続く】
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