合宿

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あの日から9年が経ち、 俊は16歳になった。 あれからすぐに母親は亡くなり、 父親は蒸発し、施設に入れられた。 その翌年に、子供に恵まれなかった 老夫婦に引き取られ、 裕福な生活を暮らせていた。 中学に上がってすぐに ソフトボールを始め、 あの日もらった帽子とグローブを 肌身離さず持っていた。 そして、高校に入った春。 朝早くに合宿場に向かっていた。 汽車の中の隣の席は、 高校に入って出来た友達の 和彦だった。 「お前…。  まだあの女の人探してんの?」 「ったりめ~だろ。  俺はあの人じゃないと駄目なんだ。」 「ったく。お前を好きになる女が  かわいそうだよ…」 俊はあの頃からすごく成長し、 背もかなり伸びて、キリッと 男らしい顔立ちになり、 髪は茶色く染めてワックスで 丁寧にセットされていた。 「モテないわけじゃないのに…  何でそこまでこだわるの?」 「分かんない。けど、  他の女じゃ駄目なんだよ。」 「あっそ~。  そろそろ着くぜ。  今回のコーチはすげえ  美人の人みたいだぜ。」
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