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それに、今回の旅行には大きな目玉がある。
なんと、宿泊費がかからないそうなのだ。
2人がいい宿を知っているらしい。
「昼間は海で泳いで、夜は温泉だ!」
種岡君がテンション高めに声を出す。
高爪君もそれに乗ったのだが、なぜか「水着ー!」「ビキニー!」と2人で騒ぎはじめた。
「まったく、なんで男ってこんなに馬鹿なんでしょうね」
「あいつらと一緒にするな」
元気な2人をあすなちゃんと柄沢君のあの呆れきった表情を私は忘れないだろう。
それが今から3日前の話。
私はこの時はこのメンバーならきっと楽しむことができると思っていた。
それはきっと、私が彼のいない世界に少しずつ慣れてきた証でもあるだろう。
「――遠山、起きろ」
私は柄沢君に肩を叩かれて目を覚ました。
いつの間にか私も眠っていたようだ。
「ごめんなさい! 私、起きてるって言ったのに…」
私は慌てて彼に頭を下げた。
私が寝たら柄沢君は一人になっていたのに、なんてことをしてしまったのだろう。
だが、柄沢君は私と対照的に落ち着いていた。
「疲れてたんだろ? もう着くからこいつらも起こしてくれ」
そう言って彼は立ち上がった。
案の定、膝の上で眠っている高爪君が頭から落ちる。
ゴンッ!と鈍い音が響いた後、「いって~」と高爪君は体を起こした。
もう少し優しい起こし方はなかったのだろうか。
私が苦笑している横で、柄沢君はさっさと電車から降りる準備をしていた。
やがて電車は終着駅にたどり着く――
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