矢尾あすなとドレッサー

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◆ ◆ ◆ 1日目。 あたしは暇そうな亮太を連れて買い物に出かけた。 今、駅前では秋物がセールしているのだ。 すれ違う女性は大きな紙袋を抱えて歩くのも大変そう。 そんな中、あたしは自分のバック一つで颯爽と道を歩いていく。 「あすな…ちょっと休憩しようぜ」 亮太は肩で息をしながら両手に抱えた紙袋を地面に降ろした。 「ちょっと、新品が入ってるんだからもっと丁寧に扱いなさいよ」 「荷物持たせておいて何言ってるんだよ…」 そう言いながらも亮太には覇気がない。 いつもなら喧嘩腰で反論してくるのでこれは相当疲れているようだ。 仕方がないのであたしは近くの喫茶店に亮太を連れていくことにした。 ここはコーヒーとスコーンがとても美味しい喫茶店だ。 店内も木造で落ち着いた雰囲気を醸し出しているし、置かれている小物もとても可愛い。 だが、亮太は椅子に座ると「疲れたー…」とすぐに机に突っ伏してしまった。 こんな洒落た店でだらしなく座る彼の姿は正直この場に相応しいない。 「男なんだからもっとシャキッとしなさい」 全く、せっかく久しぶりに2人きりで遊んでいるのに亮太がこんな調子では台なしだ。 だが、こうして亮太と遊ぶのは本当にいつぶりだろう。 中学校に入ってから、部活は同じだったもののお互い気恥ずかしくなって一緒にいる時間ががくんと減った。 そう考えると小学生が最後だろうか。 小学生の時は身長も全然変わらなかったのに、今では20cm以上差がある。 高校卒業して3日で髪を茶髪にした時は流石に驚いたが、最近染め直した明るい茶髪ももう見慣れてしまった。
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