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おまけ
◆ ◆ ◆
「な~にシケた顔しているのよ」
あたしの声に彼らは「ん?」と顔を向けた。
「あすなちゃん、もう体調いいの?」
高爪が心配そうに声をかけてくれたが、あたしは安堵させるように頷く。
「まだ体がだるいけどね…でも単位がやばいから来てるのよ」
だが、昨日は久しぶりにゆっくり寝れたので体調自体はすこぶる良い。
そう言うと、高爪は安心したように「そっか」と笑う。
「もう大丈夫よ。色々ありがとね」
あたしは口もとを綻ばし、3人にプレゼント用の小さなクリアバッグを渡した。
「クッキー焼いたの。細やかだけど、お礼ってことで受けとって」
「お、美味そう。ありがとう」
嬉しそうに彼らはあたしの特製クッキーを受ける。
だが、柄沢だけは気まずそうに頭を掻いた。
「お礼を言われるほど何もやってないけどな」
「いろんなもの壊したしね」
あはは…と高爪は苦笑するが、誰もフォローをしない。
彼の言う通り、柄沢はあたしの傘やらドレッサーやら壊しまくったからだ。
仕方がないとはいえ破壊神にもほどがある。
そんな柄沢に罰の意味を込めてあたしは彼にメールを送った。
「柄沢、携帯見て」
「あ?」
柄沢は眉間にシワを寄せながら携帯電話を見た。
そしてそこに添付されていた幸せそうに眠るリックと美波の写真を見て柄沢は吹き出した。
いつもは冷静な彼が動揺して咳までする姿には笑わずにはいられない。
「なになに?」
その反応に高爪も亮太も気になるようで柄沢の携帯電話を覗き込む。
が、柄沢は見られまいと素早く携帯電話の画面を落とした。
「まあ、有り難く頂いておく」
しかし、意外と素直な柄沢にあたしは少し驚いた。
「これで何かあった時こいつを揺すれる」
「え?」
だが、次の彼の発言にあたしは思わず聞き返した。
そんなあたしに柄沢は「冗談だ」とほくそ笑むだけ。
もしやあたしはとんでもない過ちを侵したのではないだろうか。
いや、そんなことない…と、信じたい。
だが、そんな空気を高爪は壊してきた。
「なー、見せろよー」
まるでじゃれるように立ち向かう高爪に柄沢は「断る」とあしらう。
それを亮太は温かい目で見守っていた。
その優しい眼差しを見て何となく亮太が2人と一緒にいる理由がわかる気がした。
彼等を遠目から見ているだけで、ほっこりとした気分になれるからだ。
あたしはそんな楽しそうな彼らに気づかれないようにそっとその場から離れた。
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