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…後から聞いた話だが、あの日から先輩達は女の人の夢を見なくなったらしい。
それは、きっと彼女が無事成仏できたからだと信じている。
それからホラー研究会とやらは名前だけが残り、先輩達は全員そのサークルを去った。
あんなことが目の前であったら幽霊を信じようと信じまいと、もう心霊スポットなんて近づかないだろう。
これでいいんだ。心霊スポットなんてむやみやたら周るものでない。
でもあの廃墟は今でも同じ場所に建っている。
あれだけの霊がうろついているんだ。
これからも心霊スポットとして名を残すだろう。
きっとまたあの廃墟に足を運ぶ人が出てくるはずだ。
俺は願う。
その招かれぬ訪問者が、何事もあらんことを。
これで全部解決した。
全部解決した…はずなのに。
今日もさとりんは俺らの前に現れなかった。
いつもの学食の、いつもの席。
いつもと違うのは、俺と種岡の間に空白の席があるだけ。
俺も種岡も、せっかくの昼食も箸がなかなか進まなかった。
「…隣、空いているか?」
そのけだるそうな、やる気のない低い声がするまで。
『兄ちゃんが助けたかったのは、統吾君と種岡君だよ』
あの日の瞑ちゃんの言葉が、不意に過ぎる。
「…勿論だよ」
髪を掻きながら照れ臭そうに言うさとりんに俺は笑いかけた。
「ごめんねさとりん…」
助けてくれて、ありがとう。
そう言うと、さとりんも釣られて笑った。
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