高爪統吾と昔の話

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1年で1番暇な時期って大晦日の夜だと俺は思う。 ーーだってそうだろう? さとりんも、種岡も、年末だからってみんな実家に帰ってるのだ。 実家に住んでいる俺としたら、遊ぶ相手すらいなくて暇でしょうがない。 今だってうちの家族はぐうたら過ごしている。 父ちゃんは居間でごろ寝しているし、姉ちゃんはさっきから、年越しの音楽番組かお笑い番組かでテレビのチャンネルを行ったり来たり。 そんな俺らに見兼ねた母ちゃんが台所から声を張った。 「皐月! 統吾! あんたら、ちゃんとお参りしたの!?」 「してなーい」 俺も姉ちゃんも返事が明らかにやる気が見えなかったからか、母ちゃんは「まったく…」とエプロン姿のまま俺たちの前に立った。 「ちゃんとお参りしなさい。あんたらが今年も元気でいれたのはご先祖様たちが見守ってくれたからなのよ?」 そう言って、母ちゃんは無理矢理俺たちを和室へと行かせる。 俺の家族はこうして年を越す前に仏壇でお参りをする。 こうすることで供養にも繋がるって母ちゃんは信じているらしい。 とは言っても、じいちゃんもばあちゃんもまだまだ元気だから、仏壇にはまだ母ちゃんのお腹の中にいた総吾と俺の写真しかない。 幼い頃にはよく言われたものだ。 「統吾のことは、きっと総吾が守ってくれる」と。 結果的にはこうして守護霊様となって守ってくれている。 だが、俺は母ちゃんの三段腹を見て時々思うのだ。 総吾の奴、母ちゃんの血と肉になったのではないかと…
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