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気になる。
なんであの時の刀也はスポーツバックのほうを持っていたのだろう。
帰宅してからも自室で部屋の天井を見ながら、俺はそればかり考えていた。
部活の時しか使わないって言われても、通り魔事件があってから、部活は自粛している。
だが、その前はほぼ毎日だけど、使うのはスクール鞄だ。
他はいつ使うというのだ。
「わかんねー!」
普段使わない頭を利用したことでもうパンクしそうだ。
俺は寝転がっていた体を起こし、そのまま両手で頭を抱えた。
秋の空は日が短く、俺の部屋を西日が照らす。
柔らかな風が部屋に巡り、カーテンをふわっと揺らした。
窓が開いていないことには、その時は気づいていない。
揺れるカーテンの先には、総吾が突っ立っていた。
総吾が何も言わないで現れたのは、多分あれが初めてだ。
総吾は黙ったまま指したんだ。
刀也の写る写真を。
「刀也に何かあったの?」
心音が高まるのがわかった。
まさかあいつ、本当に自分の偽者に探しにいったのではないか。
それに、総吾が出ると言うことは何か危険な目に合っているような気がして仕方がない。
「刀也の場所、わかる?」
総吾は真っすぐ俺を見据え、深く頷いた。
それを合図に俺は部屋を飛び出した。
転がるように階段を駆け降り、鞄も持たずに家を出る。
自転車にまたがると同時に俺は目を閉じ、辺りを集中させた。
総吾が刀也を探してくれている。
俺は彼を頼りにそれを辿るしかない――
あっちだな!
総吾に確認するように胸中で呟き、俺は自転車を力強く漕ぎ出した。
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