高爪統吾と昔の話

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俺は自転車を漕ぐ―― 誰もいない商店街、後ほどさとりんの家になる寺を越え、冷たい秋風の中を総吾を頼りに抜けていく。 別に、漫画みたいに総吾が空を飛んで案内する訳ではない。 時々総吾の影が視えるが、だいたいはカンだ。 「こっちだ」と言っている気がするほうに進んでいるだけ。 俺は息を切らしながら、総吾が案内してくれた場所へ自転車を停めた。 神社だ。 よく夏祭りとかやっているあの神社。 大きな鳥居が俺の前に立ちはだかり、石階段がずっと続いている。 神社の本堂へ行くには、これを上がらなければならない。 俺は激しく自転車を漕いでほてった体に鞭を打つように、階段を上っていく。 秋なのに暑い。 あの時の俺は上はTシャツだったが、下は制服のままだった。 面倒臭がらないでちゃんと着替えればよかった。 後悔しながらも汗で引っ付きそうな制服のズボンの裾をあげ、長い階段を上っていく。 そして上がった先は拝殿で古い狛犬たちが迎えてくれた。 拝殿は林の中みたいに木で囲まれている。 刀也疎か人一人いない。 俺は総吾を見つけるために辺りを見回した。 総吾いわく、刀也はこの林の奥にいるらしい。 空は橙色で、まだ外は明るかったが、背の高い針葉樹に沢山のカラスが俺を見下ろしているのがなんだか怖い。 それでも、行くしかなさそうだ。 俺は伸びきった草をかきわけ、深い林の中へと入っていった。 枝が折れる音がやけに耳に入る。 きっと樹海はこんなものじゃないだろうが、それでも俺には怖かった。
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