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ここからは刀也から聞いた話だ。
下校中、刀也はふらりと寄り道をした。
その場所はゲームセンター付近と、商店街…つまり、“偽物”の目撃情報があったところだ。
しかし、偽物は一向に現れない。
もう帰ろう。
諦めた彼は商店街前のバス停で次のバスに乗り込んだ。
「やっぱり他人の空似だったのかな」
期待していただけに、がっかりしていた刀也はぼけ~っとしながら外の風景を眺めていた。
大榛寺を過ぎ去り、神社の前を通り抜ける。
ちょうどその時、誰かが神社の石階段を上っていくのが見えた。
こんなに通り魔で騒がれている中、神社に寄るなんて珍しい。
そう思った彼はなんとなくその人を見ていた。
近づくにつれ、よくわかる。
見慣れた高校の制服。
自分とお揃いの青いスポーツバック。
そして見間違えるはずない、自分とまったく同じの顔立ち。
あれが、“もう一人の刀也”
刀也はすぐさまボタンを押して、次のバス停で降りた。
後のことは俺の想像通り。
彼を追跡していたら、足を滑らせそのまま崖に落下した。
鞄もその中に入っている携帯電話もなくし、終いには偽物も見失い途方に暮れていたそうだ。
しばらくほっついていたら、突然物音がした。勿論俺だ。
ちなみに、あの高さから落ちても無傷だったらしい。
流石頑丈が取り柄の刀也である。
とにかく、俺があそこから落ちたことは結果オーライだったと言うことだ。
問題は、ここからどうやって帰るかだ。
しかし、刀也はそちらのほうはあまり問題視していない。
「あいつ、どこ行ったんだろうな」
どうやら、刀也は自分の偽物を見失ったことのほうが問題らしい。
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