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そこからは記憶が曖昧なんだが、どうやら俺が嘔吐している間に、刀也が警察に電話してくれたらしい。
警察の人はこんな子供の俺らのこと信じてくれるか不安だったが、「怪しい男を見かけた」と言うとここまで来てくれた。
ただ、警察は通り魔事件の犯人だと思うだろうが、俺らが言っているのは刀也に化けた彼女のことだ。
別に嘘は言っていない。
警察というのは意外と万能で、俺らは15分くらいで発見された。
俺らはすぐに元の神社に戻され、無事生還だ。
そこには俺の母ちゃんも刀也の親御さんも呼ばれていた。
そこで警察の人にこっぴどく怒られた。
「なんですぐに警察に言わなかったんだ」
彼は眉間にしわをよせ、鷹のような鋭い目で俺らを睨みつける。
あれは肩が竦み上がるほど怖かった。
しかし、そのあとの母ちゃんのほうがもっと怖かった。
「こんなところまで付いていって、死んだらどうするの!!」
母ちゃんは鬼の形相で俺に怒鳴りつける。
あの時の母ちゃんはただでさえ恰幅がいいのにあまりの怒りで山のようにでかく見えたものだ。
「ごめんよ母ちゃん~」
頭にゲンコツを食らった俺は頭を押さえながら母ちゃんに引きずられていった。
その様子を刀也は「しっしっし」と笑いながら見ていた。
そのちょうど刀也の後ろだ。
母ちゃんに引きずられながらも俺ははっきりと視えた。
彼女が林の入り口で、優しく微笑んでいるのを。
「ありがとう」
そう言って彼女は光を放ち、天に昇っていく。
今でこそ見慣れてしまったが、あの時の俺はあまりの綺麗さに言葉を失ったのを覚えている。
俺は天に昇る彼女に向かっていつまでも手を振った。
それが、最初の出来事。
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