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もうすぐ今年が終わる。てた
年末の大売り出しがあった時はあんなに騒がしかった商店街も、今となってはシャッター街と等しい。
世界の終わりってこんな感じなのだろうか。
そう思わせるほど、辺りは静寂していた。
ミシ…ミシ…と雪が踏まれる音だけが聞こえる。
深々と降る雪はいつもより大粒で、街灯に光って綺麗だ。
ふぅーっと夜空に向かって吹くと、白く染まった息が立ち上る。
寒いな。流石年末だ。
――最後に刀也に会いに行った時は半年前だった。
あれから考えると、俺も随分変わったものだ。
あの時は、確か美波ちゃんとあすなちゃんに出会うちょっと前。
まだ種岡ともそんなに親しくなかったっけ。
「お前…中学どこだった?」
放課後、いつもの憩いの場でさとりんは思い出したように俺に訊いた。
「絹子川中だけど、どうしたの急に」
ごく当たり前のように答えると、さとりんは目力溢れるあの両眼を大きく見開かせてさらに俺に尋ねた。
「なら、剣道やってた花加って奴知らないか?」
冷静なさとりんにしては興奮気味で、何かを心待ちしているようにも見えた。
多分、俺が知っている花加と、彼が思っている花加は同一人物だ。
「花加刀也?」
その名を出すとさとりんは「それだ」と珍しく嬉しそうに笑う。
正直俺もびっくりした。
まさかさとりんの口から刀也の名前が、しかもよりによってあの日に言うのだから。
「今、あいつはどこで何やってるんだ?」
興味津々に訊くさとりんだが、それには訳があった。
さとりんの剣道経験の中で、唯一決着がついてないのが刀也だったらしい。
しかも力は互角。戦闘スタイルも一緒。
好敵手に相応しい相手だったとさとりんは語る。
だから、また会いたいんだと。
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