高爪統吾と昔の話

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だから、俺は思ったのだ。 もう目の前で友達を死なせたくない。 そのためなら俺は、どんな奴だって助けてやる。 幽霊だって、悪霊なんかになる前に救ってやるんだってな。 それが、今の俺をここまで動かしているのだ。 ――さとりんと来た時は花とかいっぱいあったのに、12月の墓場は雪しかない。 あれからもう半年経つのか。 「本当に早いね」 俺は刀也の墓についた雪をほろう。 墓には刀也の遺骨はあるが、刀也の魂はない。 それはこの世に未練もなく成仏したということだろう。 きっと、もっと剣道はやりたかっただろうが、あいつはいつも全力だった。 だから、何も思い残すことはなかったのだと思う。 「刀也、俺、春になったら20になっちゃうよ」 同じ年に生まれたのに、刀也の時は18で止まったままだ。 俺が刀也より年上だなんて不思議な気分である。 まあ、何言っても刀也は返してくれないのだが。 それでも俺は刀也に語る。 ーー刀也。 お前が寄越した相方は凄いよ。 鈍感で乱暴なところもあるけれど、あいつ本当に強いんだ。 刀也の言った通りだったよ。 何度あいつに助けられたかわからないくらいだ。 あいつを寄越してくれたおかげでこの1年楽しく過ごせたよ。 そりゃ、死にかけたこともあったさ。 けれど、あいつが…柄沢悟がいたら怖くない。 「ありがとう刀也」 俺、これからも頑張るから。 天国っていうところから見守っていてよ。 俺は母ちゃんがくれた缶コーヒーを刀也の前に置いた。 どこかから金の音が聞こえる。 どうやら除夜の鐘らしい。 「…ハッピーニューイヤー」 乾杯。 俺は墓に置いた缶コーヒーをぶつけ、プルタブを開けたコーヒーを口に運んだ。
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