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旭のばっかやろー!!
俺は心の中で叫んだ。
それはなぜか。
旭の奴が買い物の約束をドタキャンしたからだ。
せっかく3人でバンドスコア買えると思ったのに、しかも何が「あたしの分もいい曲探してきてね(ハート)」だ。
あいつ、絶対にこの状況をわかっていやがる。
旭がいない。
イコール俺と牧穂しかいない。
そう、つまりだ。
俺は牧穂とランデブー…デートすることになる。
「仕方がないよ。急な用事なんだし」
怒りと悲しみに明け暮れる俺を牧穂はなだめる。
そんな彼女を俺はよそよそしく振り向く形で見つめた。
「どうした? 統吾。顔が赤いぞ?」
挙動不審な俺に牧穂は不思議そうに顔を傾げる。
しばらく会わないうちに、牧穂の髪は少し伸びていた。
ナチュラルメイクにショートパンツ。
それに柄のついたロングティーシャツというコーディネートだった。
シンプルが一番だ。
彼女らしくボーイッシュの中に女の子らしい可愛さが見え隠れしている。
あれ以来あすなちゃんたちと交流があるみたいで、時々あすなちゃんに選んでもらいながら服を購入しているらしい。
なので、牧穂の女らしさが加速している。
一年前、しかも半年も彼女を男だと思っていた自分をぶん殴りたいほどにだ。
天気は快晴。
気づけば桜は散り、季節は夏へと移り変わろうとしていた。
そんな初夏の涼しげな天気の中、俺と牧穂は街へと繰り出す。
目的はなんであれ、デートはデート。
恥ずかしながら、俺は女の子と2人きりで街へ行くなんて初めての経験だった。
今まで意識していなかった分、無駄に緊張が高まる。
「な、なんか歩き方ぎこちないぞ…」
「そ、そうか?」
牧穂は苦笑いしている。
こんなに俺は緊張しているのに、牧穂は至って冷静だ。
こんなので本当に俺は大丈夫なのだろうか。
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