七瀬牧穂と子犬のワルツ

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街から絹子川に戻っておよそ20分。 俺たちは麻沼冒険公園へ足を運んだ。 ここに来るのは実に久しぶりだ。 残念ながら名物の梅は散っていたが、広い花壇にはマリーゴールドやパンジーなど可愛らしい花が咲いていた。 昼間だったので遊具では子供たちが遊んでいて、大人たちはそれを見守るようにベンチに座っていた。 「話には聞いていたけど、広いな」 初めて来たと言う牧穂は感嘆の息を吐き、辺りをクルクルと見渡した。 特に噴水が気になるようで、彼女は鞄からカメラを出し、両手で構えた。 その次は道端に咲いているマーガレットに止まっている揚羽蝶を。 その様子は真剣そのものだ。 俺は彼女から離れ、売店に向かった。 もう一つ名物があったからだ。 「牧穂」 それを買った俺は牧穂に渡す。 「え? いいのか?」 そのピンクと白がきれいにミックスしたソフトクリームに牧穂は興味を持った。 「沼公園名物"梅ソフトクリーム"だ!」 別名梅林公園とも言われる公園だ。 絹子川ではここでしか味わえない。 地元民の俺だからこそわかる情報だ。 「休憩しよ?」 俺は甘酸っぱいソフトクリームを舐めながら、彼女をベンチへと誘う。 とは言うものの、保護者やカップルがベンチを占領していて座れそうな場所は噴水から離れた古いものしか見つからなかった。 大きな樹木が目印の木造ベンチに俺たちは腰を降ろす。 「統吾…食べるの早すぎじゃないか?」 牧穂のソフトクリーム頭部が丸くなったころ、俺はコーンへと突入していた。 「そう?」 呑気に俺はバリバリとコーンを食べる。 「…あ」 溶けたアイスと混ざったせいで、噛み付いたコーンは変な形で砕けた。欠片が地面に落ちる。 その中には直径3cmのそこそこ大きな物もあり、俺は勿体ない気持ちになった。 だが、その大きめの欠片が俺の足元に落ちた途端、ひゅっと引っ込むように消えたのだ。
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