七瀬牧穂と子犬のワルツ

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そこから僕の大学、家、公園の往復生活が始まった。 ホームセンターで子犬用のドックフードを購入し、朝と夕方にワルツに餌をやりに行く。 初めは水でふやかしたドックフードに警戒したワルツだったが、すぐにモリモリと食べるようになった。 夕食をあげる時は、たまに旭や統吾もついてきてくれて、ワルツと遊んだ。 旭はワルツの扱いが上手くベンチに座りワルツを膝に乗せて頭を撫でた。 その時はワルツもおとなしく、時々彼の膝の上で寝ていた。 統吾はというと、やはりワルツに追いかけまわされていた。 それに、どういう訳かこんなに人懐っこいワルツも統吾にだけはたまに唸り声をあげる。 そして、僕や旭には一切しないのに統吾には甘噛みするのだ。 その度に統吾は「絶対俺のこと嫌いだろ!!」と喚く。 それならここに来なければいいのに。 そう思うのだが、統吾もワルツにお近づきになりたいらしい。 ビクビクしながらワルツを撫でようとする姿を何度も見かけた。 そんな生活をしているものだから、僕のカメラの写真データも随分と潤った。 僕の中でオススメの写真はこの2枚。 先ほど話した旭の膝の上で眠るワルツと、ワルツと睨めっこしている統吾だ。 2人ともいい被写体だった。 ワルツはと言うと凄まじい早さで成長した。 主に丸くなったのだ。 今まで公園の残飯を食べていたのだ。 その頃よりは確実に太ったが、それだけでなく体自体も大きくなった。 いつも見ているので気づかないが、写真でみると一目瞭然だ。 そして、この前旭に言われた。 「マキちゃん。最近明るくなったわよね」 クスリと笑う旭。 その言葉に僕はなんだか照れ臭さを感じた。 ここ最近の僕は充実した生活を送っている。 そんな僕の心に水をあげたのは、間違いなくワルツだ。 ワルツと一緒にいることが僕の生きがいになっていたのだ。
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