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その衝撃で僕はスピードをつけたまま前に突っ込むように倒れた。
痛みで声がでない。
転んだ拍子で膝を打った。
しかも、その時に摩擦が生じたのかズボンがやぶれ、そこから真っ赤な血が滲んでいる。
頭のほうは、幸いフードをしていたのでそれほどの衝撃ではない。
問題は足だ。
僕は痛みで立ち上がることもできなかった。
そうこうしているうちに、男たちとの距離が縮まる。
「なんなんだお前は」
男は舌打ちをしながら、僕から自分の携帯電話を取り上げた。
「どうなるかわかってるのか?」
脅すような口調だが、息がきれて男もどうしようもない。
だらしない奴だ。
僕はギロリと2人を見つめる。
僕は怒りのまま男たちにぶちまけた。
「昨日…子犬殺しただろ」
その声は僕自身もびっくりするようなドスの聞いた声だった。
だが、男たちは怯まない。
しかも「は?」ととぼけやがる。
それに加え、男たちは耳を疑うようなことを口にした。
「それがどうした?」
冷めた目つきで僕に言う。
それは肯定の答えなのに反省も何も見られなかった。
「お前は写真見られたから言うけどよ。それがどうした?」
「動物殺して困る奴がいるのか? どうせ放っておいたって保健所行きだろ?」
「殺す手間が省けたじゃないか。むしろ感謝してほしいくらいだ」
そう言ってこいつらは高笑いするのだ。
許せなかった。
ワルツたちを殺したこいつらを。
命を奪っても、何も思わないこいつらを。
笑っているこいつらを。
僕の怒りは頂点に達した。
僕は足の痛みも忘れてそのまま男たちに飛びかかった。
男たちは驚いて反射的にたじろいだ。
その時僕の腕は振るいかぶって、1人の男の顔面をぶん殴る寸前であった。
その勢いで僕のフードはぱさりと落ちる。
僕の顔が露わになったのを見て、男たちが少し驚き、そして笑った気がした。
普段から異性を気にしていないのがここで仇となるなんて思いもしなかった。
僕はこいつらに比べ、細く、力もない…
ただのか弱い女にしか過ぎないのだ。
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