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目が覚めた俺は度肝を抜かされた。
いつの間にか車の後部座席で横になっていたからだ。
ズキズキと痛む頭を抱え、俺はゆっくりと起き上がった。
一体俺はどれくらい寝ていたのだろうか。
固いシートに寝ていたので背中に痛みがあった。
喉も焼けるようでカラカラに渇いている。
ここはどこだ。
なぜ俺はここにいるのだ。
疑問は多々あるが、まずは状況を整理するのが先だ。
俺は眠っている脳みそを叩き起こし、俺の残る一番新しい記憶を蘇らせた。
夏休みだからさとりんと種岡も実家に帰っていた。
暇だった俺は帰省してきた高校時代の友人と遊ぶ約束をしていたはず。
「…竹中」
頭に浮かんだ友人の名前を無意識に呟く。
メンバーは竹中と風間に戸田。
刀也の墓参りしてから飲み屋へと向かった。
それからは昔話に花を咲かせたり、現状を報告したりと楽しいひと時を過ごしていた…はず。
実はここからすでに記憶が曖昧だった。
そこで俺は一つ思い出した。
この車は竹中の車だということだ。
俺も何回か助手席に座ってドライブに行ったことがあるから間違いない。
なら、どうして竹中の車なのに持ち主の姿がないのだろうか。
俺は席に座り直して深く考え込んだ。
張り紙が貼られたお茶の存在に気づくのはそれから数分してからだ。
ペットボトルに入った新品のお茶は、俺が寝ていた枕元に落ちていた。
車の電気をつけ、その張り紙を読む。
『すぐ戻るから車の中で待ってろ』
流れるような達筆な字からして、竹中の筆跡だということに予想がついた。
なんだなんだあいつら、俺を置いて本当にどこかへ行ってしまったのか。
文句一つ言いたいところだが、いう相手がいない。
諦めた俺はペットボトルのキャップを開け、ぐびぐびとお茶を飲み始めた。
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