高爪統吾とデジャヴ

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俺は緊張しながら、画面をスクロールした。 インターネットというのは恐ろしい。 こんなにも簡単に事件を掘り下げてしまうのだから。 『さっきのニュースにヤバイの映ってた』 その次に出たのは事故現場の写真で、さっき竹中に見せてもらったニュースがテレビ放送されたものだった。 見ている人も『どこ?』とクエスチョンマークを書き出すばかりだ。 正直、俺もわからなかった。 夜だったこともあり、山奥で灯りに照らされたパトカーと救急車、そしてヘコんだレールとそれにぶつかった乗用車が映っているだけだったからだ。 スクロールすればするほど写真がコマ送りで貼られていた。 そこで事故車の写真のアングルがもう一つあることに気づいた。 パトカーと事故車を入れた写真だ。道の奥行までばっちり入っていた。 閲覧注意とされていたのはこの写真だった。 その写真のアップを見た時、俺は凍りついた。 道の奥で、白い服を着た女の子の姿が小さく写っていたからだ。 ぼやけて顔までははっきり見えなかったが、俺はこの服を知っている。 あの病院の病衣だ。 俺は生唾を呑む。 「…あの子が映ってるんだよ」 竹中がトーンを下げて答えた。 「多分、この人たちもあの病院に行ったんだろ」 きっと肝試しで立ち寄り、そしてこの子に会って、逃げ出す道中で事故。 真意はこの人たちにしかわからないが、想像できる。 「…俺たちは運がよかったんだな。一歩間違えば、俺たちも事故にあっていたかもしれない」 そう話す竹中に「そう…だね」と頷くことしかできなかった。 これが、遊び半分で心霊スポットなんかに行ってしまった者の成れの果てなのか。 画面を見ていると胸が痛くなった。
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