種岡亮太と群青

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俺はあすなに連れられるがまま、旅館の中へと入った。 いつもは痴話喧嘩一つしそうな俺たちも沈黙が続くまま目的地へと向かう。 やがて、あすなはある部屋に止まった。 「入るよ?」 そうノックして扉を開ける。 部屋にはベッドが一つと、小さなソファーがこじんまりと置かれていた。 奴らはそこにいたのだ。 ここはおそらく美波ちゃんが泊まる部屋だ。 ベッドの上に座っている美波ちゃんの足元には彼女の荷物らしき鞄が置かれていた。 「種岡君、あすなちゃん…」 心配そうな表情で俺たちの名を呼ぶ。 「よお」 そんな美波ちゃんの緊張した空気を壊したのは悟だ。 「生きていたか、サボリ魔」 ニヤッと笑う悟はきっと俺のことなんて気にしていない。 相変わらず備え付けのお茶を1人すすっているような悟だ。 1番心配していたのは統吾かもしれない。 「なんか痩せたね。ちゃんと食べてる?」 笑顔は作ってくれているが、無理しているのが俺でもわかった。 その悲しい感情は隠せていない。 「大変だったね」 統吾が優しい声で俺たちに言う。 俺は統吾たちに何も話していない。 しかし、きっと統吾たちは俺の状況を知っているのだろう。 知っているうえでのその一言が俺の涙腺にクリティカルヒットした。 その温かさに触れたら、俺の心はまた砕けてしまう。 「統吾…悟…」 拳をぎゅっと握り、俺は涙を流しながら必死に請いた。 「アキを…探してくれないか」 その言葉に1番驚いたのは他でもなく、あすなだった。 「亮太?」 彼女にとっては俺の言うことは頓珍漢だったかもしれない。 「棚町君を探すってどういうこと?」 俺はあすなに2人の体質を隠していた。 しかし、俺が唐突に言ってしまったことにより明かされてしまったのだ。 俺にはもう感情の制御ができていなかった。 「なあ…お前ら幽霊視えるんだろ?」 俺は顔を俯き、涙を垂れ流しながらそのまま頭を下げた。 プライドなんていらない。 アキにもう一度会いたいだけだ。 もう俺の頭にはそれしかなかった。 「頼む…アキに会わしてくれ」 戸惑っているのは空気で感じた。 呆然としているあすな。 困ったようにおどおどする美波ちゃん。 何かを考えるように俺を見つめる統吾。 ただ一人、悟だけは違った。 悟はため息をつき、たった一言俺に言ったのだ。
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