種岡亮太と群青

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悟の言葉も、統吾の行動も、全て俺がこれ以上傷つかないようにするための言動だった。 なぜ、俺なんかのためにここまでしてくれるのだろう。 疑いすらかけてしまう。 そんな俺とは裏腹に統吾は微笑んだ。 「友達なんだから、放っておけないよ」 その情け深い彼の優しさが、冷えきった俺の心を温めた。 だからだろうか、俺は統吾になら話していいと思ったのだ。 「あのさ、統吾…」 1人で考えていた、あすなにすら言えなかったこと。 「なんで俺なんかが生きているんだろうって、ずっと思っていたんだ」 この陰鬱な感情を俺は隠していたかった。 だが、自分でも気づかないうちに出ていたのだ。 神が本当にいるなら殴りたい。 なぜ、俺なんかではなく、アキの命を奪ったのか。 しかし、神が本当にいるなら縋り付きたい。 俺の寿命をアキにあげてくれないか。 それで、俺が死んでもアキが生きるならそれでいい。 俺のような価値の低い人間より、アキみたいな人間が生きたほうが世のためにもなるだろう。 そんな、遠回しの自殺観念が頭から離れないのだ。 けれども俺にはまだ、アキの代わりになる勇気がない。 こんな抑えきれない俺の鬱感情を統吾は真顔で聞いていた。 何か考えるように時々視線を下ろしながらこの黙りとした空気を凌ぐ。 そして、夜空を仰いで俺に言った。 「俺もさ、友達死んだことあるんだ」 突然の独白に俺は言葉を失った。 そんなこと、統吾は一度も言ってこなかったからだ。 あんぐりと口を開けていると、統吾は悲しげな顔で、俺に話してくれた。 「刀也って言って俺の中学、高校の友達。めちゃくちゃ剣道強い奴だったんだ」 才能あふれるだけでなく、人望も厚い。 彼がいるだけで周りが明るくなり活気が出た。 太陽みたいな存在だった。 その太陽も、突如消え去った。 「でも、交通事故で死んじゃった。俺と遊ぶ予定だったから、その時俺も刀也と一緒だったんだ」 統吾の声がどんどん震えていく。 「俺の目の前で…刀也はーー…」 「いい。もういいよ、統吾」 俺は涙声になる統吾を止めた。 悲壮に顔を歪める統吾の目からは、ポロポロと涙がこぼれていた。 これ以上聞くと、俺も苦しくなる。
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