種岡亮太と群青

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俺は統吾の泣き顔を見ないように視線を逸らした。 それでも疑問に思った。 「刀也って奴には会いたいとは思わなかったのか?」 統吾には幽霊を視る力がある。 それなのに、彼は刀也と会ったような素振りは見せない。 だが、統吾の答えは俺と同じだった。 「そりゃ、会いたいとは思うよ」 統吾は涙をこぼさないように空を見上げる。 「でもね、会うのは思い出の中だけで十分なんだ。だって、刀也に会えるってことは、成仏していないってことだもん。大事な人だからこそ、悔いのない人生を送ってほしいよ」 だから、統吾は刀也のことを探したこともないと言う。 それならなおさら、残された俺には何ができるというのだろう。 アキと再会するという希望をなくした今の俺の、この虚無感を埋めるのはなんなのか。 途方にくれた俺は、力なく項垂れた。 統吾はそんな俺を見つめながら述べ始めた。 「月並みなことだけどさ…それでも俺たちは生きなきゃいけないんだよ」 その言葉に、俺は顔を上げる。 そこにいた統吾は頬を涙で濡らしながらも微笑んでいた。 「亜樹君の分も生きなきゃ…生きて、彼が見てこれなかった世界を種岡が代わりに見るんだ。亜樹君が感じれなかった嬉しいことも苦しいことも、全部全部種岡が経験するんだ。でないと、天国で再会した時、亜樹君と話の種すぐに尽きちゃうよ」 今は会えなくても、絶対どこかで会えるから。 それは天国かもしれないし、来世かもしれない。 それでも、絶対に会えるから。 統吾は涙を流しながら、俺に語ってくれた。 命は亡くなる。 だが、亡くなった魂は今後の自分の糧になる。 積み重なった魂を抱え込むのだ。 統吾は刀也の命を。 俺はアキの命を。 気がつけば、俺の目からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。 統吾の言葉の意図を知ってしまった途端だ。 「アキ…アキ」 俺は無意識にあいつの名前を呼んでいた。 もうここにはいない、親友の名前を。 統吾はそんな俺を宥めるように背中を撫でてくれた。 その手がとても温かくて、堪らなく優しかった。 月明かりが泣いている俺たちを照らしだす。 月はもうすぐ満月になろうとしていた。
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